「タイ刹那ヒト」1

 コイツとこんな関係になって、もうどれくらい経ったろうか。
「太一っ・・・もうやめっ・・あっ」
嫌がるヤマトを、俺は強く押さえつける。
静かなはずの部屋に、ヤマトの叫び声と、2人の胸の鼓動が響きわたっている。
激しく暴れるヤマトをそっと撫で、耳元で俺はささやいた。
「もう少し、我慢しろよ。もういれてやるから。」
「やめっ・・・!はぁっ!」
ヤマトは疲れきっている。力では俺の方が確実に上だ。
ヤマトの中に突っ込んでいた指を抜き、自分のモノに手をのばす。
「ど・・どうするつもりだ・・・」
「ハッ、わかってるクセに。いれてやるって、言ったろ?」
「いっ、いやだっ!!」
暴れまくり、狂ったように泣きわめくヤマトの声、それさえも俺には届かない。
一気に、自分をヤマトの中にうずめていく。
快感を、もとめて。
「アっ・ああっ!・・痛いっ・・は・・太一ぃっ!!」
何も、聞こえない。
今の俺は、ヤマトの体内の熱と、その快感しか、感じない。
いつものように、そのままヤマトの胸の突起をそっとなめる。
「はぁっ、あ・・やっやだっ・・あ・あぁ・・」
感情のままに、本能のままに、奥へ、奥へといく。
我慢がきかない。一気にヤマトの最奥へと突いた。
「ああああああっ!!!」
ヌルヌルした液が、滴り落ちる。
その雫の音だけ残し、部屋はまた静かになった。
「ハハ・・もうイったんだ。じゃ、今日はこのへんにしといてやるよ・・」
そこに残るものは、何かあったんだろうか。

禁断の行為に手をのばしたのは、一瞬の狂気からだった。
あの世界から離れ、一週間がたったときのことだ。
ヤマトの横顔を見ていた俺は、ふと気づいた。
ヤマトは・・・笑っていない。
あの世界にいく前のような、冷たい冷たい顔。
それが妙に気にさわった。
ふいに、あの冒険が夢だったかのように思えた。
あそこで、確かに見たアイツのいろんな表情。
それが、夢だったかのように思えた。
何も感じてなさそうな冷たい顔、それをなんとかして崩したかった。
あの冒険は夢じゃないのだと、おしえてやりたかった。
死んだような顔のアイツを、生かしてやりたかった。
・・・のだと思う。
でも、俺が何をやっても変わらないヤマトの顔に、イラつきを感じ
、 どうしようもない悲しさを感じた。
俺は、何もしてやれない・・・?
そんな考えが浮かぶより先に、俺は禁断の行為に身をうつしていた。
・・・事故だったのだと、いえばいいだろうか。
とにかく、それからはほぼ毎日、俺たちはこんなことをやっている。
そして、もうすぐ・・・夏が終わる。

 「太一!!宿題やったの?!」
「あー、やったよー・・・」
アイスをほおばりながら寝転んでいた俺は、イラついた口調で答えた。
「お母さん、お兄ちゃん今日もずっとヤマトさんちにいたのよ。」
「げっ、馬鹿、ヒカリ、言うなって!!」
「ちなみに、宿題は全部ランドセルの中、ランドセルはずっと家にあったわ」
「コラ、ヒカリ!!!」
「た・い・ちー〜〜!!いいかげんになさい!!!」
母さんの怒鳴り声が、家中に響いた。

「ちぇっ、明日やればいいじゃんかよ、学校は明後日からなんだから。」
「でもお兄ちゃん、嘘はよくないよ。」
「あぁわかってらぁ!・・・明日ヤマトに写させてもらうよ。
 だからヒカリ、今マンガ読んでることは母さんに内緒な!」
「・・・嘘はよくないって言ってるのに・・・」
「うるさいっ。お前は早く寝ろっ」
「はーい。」
ふてくされたように、ヒカリはベッドへ向かう。
・・・と、何か思いついたかのように振り返り、言った。
「ヤマトさん家に行くの・・?明日も?」
「・・・そうだよ。だから何だ?」
「明日も、やるの?」
「なっ?!?!」
ガタッと大きな音をたて、俺は急にいすから立った。
いすはうるさくその場に倒れた。
一瞬、冷たい空気が俺たちを包み込む。
心臓の鼓動がとまらない・・・。
すると、ヒカリはにっこり笑って、言った。
「ゲーム、やるの?」
「へ?」
急に、気がぬけた。
「あ、あぁ・・・まぁな!明日こそ全クリだぜ!ハハ・・・」
「そう。おやすみ。」
ヒカリはそういって、今度こそベッドに入った。
 ヒカリが寝付いたあとも、俺の心臓はずっと高鳴っていた。
そして、どんどんヤマトの泣き喚く声がよみがえってくる。
『アっ・ああっ!・・痛いっ・・は・・太一ぃっ・・・』
俺は、何だか申し訳ない気持ちになって、ちょっと考えたあと、
読んでいたマンガを投げ捨てるようにして、
はやばやとベッドに入り、寝てしまった。
 それでも、ヤマトのあの声と、涙でぐちゃぐちゃの顔は
夢にまで出てきて、俺はなんだかノイローゼになりそうだった。

「何か用か・・・?・・・!!!」
「おはよう。」
 次の日、俺は早朝からヤマトを尋ねた。
俺じゃぁ、中にいれてくれそうもなかったので、
光子朗の名を語ってまで。
「な、何のようだよ・・・」
ヤマトは、怯えるような目で俺を見る。
まぁ、仕方ないかもしれないけど。
「そんな目で見るなよ。もう初めてのときから2週間くらいたったんだ。
 そろそろ・・・慣れただろ?」
勝ち誇った目でヤマトを見ながらそうささやく。
そして、勝手にいえの中へ押しかけていった。
「か、帰れよ!何の用だ!!勝手に入るな!!!」
「騒ぐなって。宿題写させてもらいに来ただけさ。」
「・・・それだけ・・・?」
「さぁな。」
フっと薄笑いを浮かべ、そのままヤマトの家にずかずか入る。
帰れというヤマトの声も、聞こえないフリをして。

 「これと、これと・・・げっ、これもやってないのかよ・・」
「だってもともと写させてもらうつもりだったし。」
「・・・・。」
俺の本当の目的なんて、もうコイツはわかっているんだろうな。
だから、沈黙はさけようがなかった。
「お前も写すの手伝ってくれよ。1人でやってたら終わらねぇ」
「・・・世話のやける奴・・・」
ため息をつきながらも、ヤマトは手伝ってくれた。
それでも、死んだような表情のままだった。

「・・・明日から、学校はじまるな。」
「・・・あぁ。」
「・・・なんか、遠くなる気がしねぇ?」
「・・何が。」
「あの冒険と・・・」
「あの冒険と?」
「お前が。」
「・・・どういう意味だ」
「ふーん、わかってるんじゃねぇか。」
「?」
「なぁ、また相手してくれるんだろ?」
「うわっ!」
勢いよく、俺はヤマトを押し倒した。
「遠くなっちゃう前に・・・もう一回しておこうぜ」
「な、何言って・・んっ」
ヤマトが文句なんか言えないように、口をふさいでやった。
さらに、舌を絡める。
「ふっ・・ん・・」
そうしてそのままヤマトの胸に顔をうずめ、言った。
「なぁ、あのときから、今まで、ずっと相手してくれたってのはさ、
 お前にもそこそこ気があったからだろ?その、『帰れ』とか、
 そういう罵声も、どうせ本気じゃねぇんだろ?」
「・・・ぶっ殺すぞ・・」
「へぇ、お前に俺が殺せるとでも思ってんの?これだけで、
 もう俺に太刀打ちできねぇクセに。」
「アッ」
服の上からヤマトの胸をまさぐり、
その突起をそっと触ってやった。
「ホラ、こんだけでもう感じてるんじゃん。
 生意気なこと言ってんなよヤマト。
 お前は、俺には勝てねぇよ。」
「何だと!!!この・・・・・はぁっ」
「ふんっ憎まれ口の一つもたたけねぇか。
 どうせ・・・犯られたいんだろ?
 もう、俺たち共犯なんだ。思う存分、やっちまおうぜ。」
「あぁっ・・ふ・・んん・・」
「ホラ、脱げよ。好きなだけやってやるから。」
「あ!・・・嫌だっ、嫌だぁ!!」
ヤマトがどれほど泣き叫んでも、俺は受け付けなかった。
暴れるヤマトの服を引き裂いた。
シャツについていたボタンが、冷たい床に飛び散る。
俺はただ、やりたいようにやっただけだ。
「こらヤマト、逃げんなよ。お前はただ寝てりゃいいんだからさ」
今度は直接、ヤマトの胸の突起を吸う。
「くっ・・・あぁっ、はっ、・・やめっ・・あっ」
必死に抵抗するヤマトを、力ずくで押さえつける。
「な?お前じゃ俺に勝てねぇっつったろ?無駄な抵抗なんだよっ」
同時に、ヤマトのズボンのチャックに手をかけ、一気におろした。
ヤマトのモノをにぎり、そのまま口に含む。
「あっ、あっ!やっ・・あ・・は・・」
舌を巧みに使い、ヤマトの反応を楽しんだ。
「あぁっあっ、くっ・・あああああっ!」
瞬間、ヤマトはイった。
俺の顔はズブ濡れになった。
「ハハっ、今日はこれくらいじゃ勘弁ならんぞ。
 もう少し、楽しませてくれるんだろ?」
とはいえ、ヤマトは多分限界だ。
俺の方も、我慢がきかなくなってくる。
こんなヤマトを前にしたら、俺だって、全然弱いのだ。
「よし、いいぞ。もうすぐ今日はやめてやる。」
「え・・・?」
ヤマトは、涙でぐちゃぐちゃの顔でこちらを見る。
「ただし・・・いれてからな。」
「はっ・・!!」
「もう、お前疲れたんだろ?だから速攻終わらせてやるって。
 いいだろ?」
「あ・・・あ・・たい・ち・・」
「大丈夫だって。できるだけ・・・いたくないようにしてやるから。」
「はっ、はぁっ!あっ・あ・太一ぃっ!
 そんなっ・・・一気に・・っ んっ」
「いくぞ。ヤマト・・・ごめんな。」
「アアッ!太一っ・・うっ・あああああっ・・」
部屋には、ヤマトの泣き叫ぶ声。
冷たい床は、ヤマトの涙と、白い液。
そこに残るものは・・・何もなかった。
「うっ、うぅっ・・・ふ・・」
ヤマトの細い腕が、ぐったりと床にもたれる。
俺は、今にも折れそうなその腕をきつくきつく抱きしめ、
もう一度、キスをした。
「ヤマト・・・シャツ、ごめんな。」
そういうと、俺はフラリと立ち上がり、宿題のドリルを手に取った。
「これ、貸してくれ。明日・・絶対返すから。」
もう、今は俺といたくないだろ・・・?と、言おうと思ってやめた。
そう思われているに違いないが、
それを直接聞いたら・・・俺は立ち直れそうになかったから。
横たわって、まだ泣いているであろうヤマトの髪にそっと触れ、
俺はその場を立ち去った。

 間違いは、たくさんあった。
何かを取り違えたから、俺たちは今、こんなことをしてしまった。
何か大切なものを、失ったような気さえした。
それでも、後に引くことはできなくて、
彼と共に存在する術はもうこの他になくて、
俺は行為をエスカレートさせるしかなかったんだ。

 明日から、学校がはじまる。
離れてしまう。
離れて―――・・・。



          
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